フィレンツェ物語り

ヴェッキオ橋上で本当に起きた・ラブストーリー

ニューヨークで仕事人生を生きてきた。
シビアな環境でキャリアをあげ、それなりに成功して、満足のいく仕事場だったけれども、今の私は、大西洋を横断してここにいる。

疲れ切った果ての一人旅。
全てを捨ててどこかに行ってしまいたい…
そんな私が選んだのは、イタリア旅行だった。理由は特になかった。なんとなく飛行機を予約していた。

一人になりたかった。フィレンツェの太陽光はニューヨークのそれより少し強い。
今の私にはそれがとても心地よかった。肌に日の暖かさを感じながら目を閉じる。

朝から私が訪ねたのはフィレンツェ街中に流れるアルノ川。街の中心にかかる橋、ヴェッキオ橋の真ん中に佇んでいた。理由は何もない。なんとなく足を運んだのがそこだっただけだ。背の低い石の壁、水面がすぐ下に見える。そこに寄り掛かり、一人の空間を味わう私。

ところが、そばに人影がよぎり、私は意識しないわけにはいかなくなった。何故、この人は他の人たちのように、いそいそと通り過ぎずに、私の前に立ち止まったのだろう…

*・゜゚・*:.。.。:*・*: .。.:*・゜゚・*

僕はフィレンツェっ子で大家族6人兄弟の末っ子。

家族でフィレンツェ街中の大きな屋敷に住んでいる。本当は、重厚な石の街より、ジャングルのワイルドな遠国に憧れるタイプだ。家族はそんな僕のことを全く理解してくれていない。僕の日常は相変わらずのマンネリ。中世都市フィレンツェの生活は若い僕には檻のように感じられる。ヴェッキオ橋から数分のところに住む僕は、今朝は早くから街の反対側へと向かっていた。この橋の上がまだ観光客で溢れ返らない、そんな時間帯。気持ちよく通り過ぎることができるタイミングだ。今のうちに歩いて行ってしまおう。観光地なんて、住んでる住民にとっては迷惑この上ない事ばかりだ。

ヴェッキオ橋の真ん中あたりまで来ると、ジュエリー店がひしめく橋の上から東西に吹き抜ける回廊があり、アルノ川の上流と下流が見渡せる。この街の日常にいつも閉塞感を感じる僕には、ここを通り抜けると時というのは、一瞬酸素が増えた広々とした空間に入り込むような、生き返るような感じを与えてくれる。

歩きながら僕の目の端は、ちょうど今渡っている橋の真ん中に佇む一人の女性を捉えた。普段から大勢の人が橋の上にたむろしているのに、なんで気になるんだ? 僕は目が離せなかった。彼女のまつ毛の長さ、その美貌に電撃を受けたかのように感じた。真上はのどかな青空が広がっているというのに…

「ボクは彼女に何かプレゼントをしないといけない」

これが僕の頭をよぎった最初のセリフだった。一体どうしたんだ、おれ…

花だ、花を買ってこよう!どうかそれまでここに佇んだままでいてくれ!僕はどうしても君に花をプレゼントしないといけないんだ!

彼はなんとか赤い薔薇を探してきて、彼女に差し出すことに成功…

これが彼女と彼のラブストーリーの始まりだった。

(松井の身の上話ではありませんが、実話をもとにしたフィクションです。)

今日のバレンタインの日を記念して…
ロマンチックな一日を過ごせますように…

ヴェッキオ橋 フィレンツェ 

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