すでに20年近くなりますが、なぜか縁あり、観光業の他、伊アグリツーリズモの研究の現地資料調べ、アポ取り等各大学や研究機関のお手伝いをさせていただいてきました。元々アグリツーリズモに泊まり旅行をするのが大好きで、毎年あちこち開拓しながら新しい施設を訪ねるのは個人的趣味でもあります。
滞在したアグリツーリズモの中でも、その成り立ち、発展が印象的であった施設、現場での語らいから得られた、裏舞台のリアル風景、家族の物語、現場の様々な工夫やアイディア、旅行に利用していただきたい魅力ある施設について等、綴っていきたいと思います。
昨今、日本でもアグリツーリズモの研究がかなり深められてきています。日本の地方創生にはとても興味深い事例を見せるイタリアのアグリツーリズモ。私はその道の研究者ではないので、実際に見聞し、泊まりに行き、交流を深める中で得られたもの、感じたもの、場合によりその資料や情報をこのブログに、イタリア好きさん向けに読みやすいよう、書いてみたいと思います。(注>以下、アグリツーリズモ、の言葉は長いので、時折、アグリと書いています。)


イタリア・アグリツーリズモの先駆者・一例
ここはトスカーナ州グロッセート県にある、とある小規模生産者さんの経営するアグリツーリズモ。緑に囲まれた美しい現在の姿と、アグリを創りはじめようとする直前、改修前の同じ建物のイメージです。
このアグリ開始は1994年、当時、17ヘクタールの土地を所有していたご主人、その内訳は、5ヘクタールの葡萄畑、1ヘクタールのオリーブ畑、麦やひまわり畑で、1人で切り盛りしていました。年間契約の従業員を抱えずにこの広さの土地を相手に農業を進めていたのですから、それは大変でした。
奥さんは、市役所にお勤めの建築家。子供が3人という家族。当時、子供が生まれ、将来のことを真剣に考え始めた夫婦は、アグリツーリズモというものを経営して自分達の事業を拡大してみようと考えました。元々資金はなかった1980年代、丁度、イタリアの法律でアグリツーリズモを推進するための助成金制度が出た頃。資金の50%を得られ、返済不要という今ではまず発付されない農家にとっては好条件の助成金制度を利用し、アグリに着手したのでした。この時の助成金により、当時150平方メートルの元々家畜小屋だった建物に、6つの客室、3つの洗面所、共同キッチンを作りました。多くの部分が彼ら手作りで少しづつ形になっていったそうです。
1990年代というと、当時はまだ旅行者は地図を手にして行き先まで辿り着いたという時代。アグリを始めた夫婦は、まず、週末と8月のみ旅行客を受け入れ、手探り状態で、経営をスタートしました。
続く…
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