〜運営初期の様子&何が大変であったかについて〜
当初、このアグリツーリズモの受け入れ可能最高人数は12名まででした。部屋が6つあったというので想像がつきます。カップルなら6組がそれぞれの客室を利用できました。
ところが、このアグリツーリズモは、どちらかというと、ファミリーに人気が出たタイプの施設。そんなことも、経営しながらわかっていった内容。
「ふむ、同じファミリーが毎年バカンスをしに来てくれる…。」
子供は無料。
だんだん家族連れが増え、部屋が狭くなってくるという課題に直面。現在でも、部屋の大きさからすると、大半の客室は、大人2人+子供1人用のサイズなのです。小学生まではなんとか家族4人を受け入れらるが、それ以上となると無理で、後年に改造した2つの客室に4名以上の家族をステイさせることができるようになります。
1994から95年、まだイタリアの通貨はリラの時代。
当時は、ハイシーズンで、5万リラ(およそ25ユーロ)という価格で部屋を提供。それでも年間集客数がのべ350名、毎年10%増しで利用客が増えていったのでした。
家族連れに好まれるタイプのアグリツーリズモとして、年々そのカラーが築かれていきました。そして、どうしても必要になってきたのが、プールの設置でした。
プールがないと魅力半減…
都会から来るファミリーにとって、プールがあるかないかは大事です。海辺での過ごし方として、海岸沿いにある恵まれた施設は、午前も午後も浜辺に行けばいいのですが、数キロでも内陸に位置していると、車で移動せねばならず、幼子を連れるファミリーにとって、午後はプールで良しとすることが出来る可能性はとても大きいのです。実際この施設は、海から車で8分程度のところにありました。
最初は簡易プールの建設からスタート。1998年に完成。アグリ経営を始めて4年目、ここは自ら投資する必要がありました。その後、2008年に今の素敵なプールが完成(上の写真)。ユーロの時代になり、以前より物価高の時代、これも自らの投資で乗り切りました。2003年にはソーラーパネルを搭載。2008年には75キロワットの太陽光発電システムを搭載。このおかげで電気代に困らなくなりました。
これらの出費はどうしたのか?
奥さんが市役所勤めの定職を持っているという点と、これまでに貯めたアグリツーリズモ経営により得た収入で捻出可能となりました。施設内、多くの部分はあちこち手作り。それでなんとか切り盛りできたというのが実情でした。
このアグリツーリズモでは何を楽しめたか?
平日は忙しい奥さんと、明け方から農耕器具を操る生産者さんのご主人。そんな彼らがどんなアクティビティを提供する余裕があったのか…。当時は「TVのある共同ルーム」というのが存在し、そこには、チェスなどのテーブルゲームが置いてありました(昔、子供たちが遊んだものをリサイクル)。そして、卓球台を置き、バスケットのゴールを設置しました。庭にキッズコーナーを作り、滑り台と跳ねるマットが登場するようになります。
菜園があったので、宿泊客は好きに野菜を取りに行って良く、また、動物小屋があったので、鶏や馬に餌をあげて良いということにしました。特に魅力的だったのは、週中に一度開催される「奥様手作りの郷土料理と食前酒の集い」。これは宿泊客向けで、無料で参加可能。旅行客にしてみると、その日の夕食は考えなくてよく、宿で地元の美味しい料理にありつけるのと共に、特に宿のご夫婦とゆっくりおしゃべりができ、更に、宿泊客同士も仲良くお喋りに興じる良いチャンスとなったのです。この施設はイタリア人のお客が大半なのですけれど、英語やフランス語しかわからない旅行客がいても、なぜか、皆で一緒に楽しい夕べを過ごせてしまうというところがあり、それは、このアグリツーリズモを経営するご夫婦の人柄からくるのだなとつくづく考えさせられたものでした。ご夫婦、決して語学は堪能ではありませんでした。
子供がティーンエージャーだった頃は、子供たちの友人が、同じような楽しみ方をしに集まったせいもあったからか、週に一度くらいの割合で、「夜のプールパーティーと夜食の会」という日もありました。
これは、宿泊客だけでなく、子供たちやその友人たちも一緒に楽しく参加したイベントであったことでしょう。宿泊客に取り、経営者の家族が一緒にいるというのは、全く迷惑なことではなく、逆に、共に楽しみ、地元の子供たちの話に耳を傾け、みんなで楽しい夕べにしてしまうのでした。
(写真・バーベキューコーナー 宿泊客は好きに利用していい。)
アグリツーリズモを経営していく上で、最も大変だったことは?と聞くと、行政手続きの面倒さがまず開口一番出てきたのに続き、ほか、運営のための規範規制管理はなかなか大変だったとのこと。特に、お客さんが何を望んでいるのかを理解するのは、ことのほか難しかったと話していました。
インターネットがなかった時代に作られたアグリツーリズモ。当時は手探りで実経験から学びながら、少しづつ作り上げていったのだそうです。逆にそれができた時代であったと…。今はそうはいかず、なんでも直ぐに準備万端にしておかなければならない、ネットが発達している現代ならではのアグリツーリズモ運営の難しさがあるのではないかとご夫婦はしみじみと話してくれました。
続く
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